この記事では、庭木の剪定をきっかけに始まった、10本もの頑固な木の根っこをプロに頼まず自分たちの手だけで抜き去った「人力伐根」の壮絶な記録をお伝えします。
突然始まった切り株との戦い。業者案件への挑戦状
それは、なんの前触れもなく始まりました。
我が家の庭木を見にきた業者さんによって、突然始まった剪定作業。立ち会った夫が「できる限り短く切ってほしい」と大雑把に依頼した結果、作業が終わって庭を見に行くと、あ然としました。かつて緑を湛えていた何本もの木々が、無残な「切り株だらけ」の姿になっていたのです。
しばらくは呆然と眺めていたものの、ふと我に返りました。このまま大量の切り株を地面に放置しておけば、いずれ腐敗し、我が家にとって天敵であるシロアリの温床になりかねません。
「それなら、いっそのこと全部きれいに抜いてしまおう!」
そう一念発起し、合計10本ほどある木の根っこを丸ごと引き抜く「伐根(ばっこん)」を決意しました。
大体において、業者さんにお金を払って解決することを良しとしない私です。当然のように、重機を使わない「アナログな人力作業」を選択しました。今振り返っても、我ながらよくぞやり切ったと、自分で自分を思いきり褒めてあげたい気持ちでいっぱいです。
もちろん、私一人の力では到底無理な作業でした。普段は仕事をこなし、腰や膝に不安を抱える夫も、空いた時間を見つけては泥だらけになって手伝ってくれました。ここは彼の実家でもあるわけですから、動いてもらって当然……と思いつつも、そこは「飴と鞭」を上手に使い分け、言葉巧みに操縦しながら、最後までお互い気持ちよく汗を流しました。
我が家の「総力戦」。大活躍した身近な道具たち
今回の開墾作業にあたり、用意したのは特別な重機ではなく、すべて家にある身近な道具たちでした。

①剣先スコップ
②ハンドスコップ
③ねじり鎌
④のこぎり
⑤剪定ばさみ
⑥釘抜ハンマー
⑦三角ホー
⑧チェーンソー
特に、①、③、④、⑤、⑦はよく使用しました。
⑦の三角ホーはかなり便利で優秀。
この中でも特に活躍したのが「三角ホー」です。農作業用の道具ですが、根の周りの硬い土をピンポイントで削り落とすのに、これほど優秀な道具はありません。これらの道具を両手に抱え、まずは最初の1本目に取りかかりました。
最初の木は、自分の膝の深さほどまで周囲の土を掘り進め、根を一本ずつノコギリで断ち切ることで、なんとか無事に抜き取ることができました。「人力でもやればできるんだ!」と、この時はまだ、小さな自信と達成感に満ち溢れていたのです。あんな「大物」が潜んでいるとも知らずに……。

最初に着手した木の穴。
膝ぐらいまで掘りました。
初めて伐根したという達成感があった。

上からの画像。
伐根ってこんな感じなんだと、少し自信をつけた。

一本目の根。
なかなかの縦長サイズ。
出現したラスボス。まるで地下に眠る「ラピュタの城」
難敵だったのは、2番目の木でした。なんと3本の木が地下で複雑に絡み合い、見るからに怪しげな雰囲気を醸し出していたのです。
嫌な予感は的中しました。
掘れば掘るほど、あちらこちらから太い大蛇のような根が現れます。周囲の土を掘り進め、土の中にうごめく虫たちに悲鳴を上げ、這いつくばって土を払い、細い根はノコギリで、人力では太刀打ちできない太い根は夫の手を借りてチェーンソーで断ち切る。気が遠くなるような作業の繰り返しでした。
さらに追い打ちをかけるように、根の隙間からデリケートな水道管の配管まで露出。万が一にも傷つけるわけにはいかないため、そこからは遺跡を発掘する考古学者のように、慎重に手作業で土を払っていきました。
周りの土を完全に掘り下げ、足場を作っても、その根っこは未だ大地に踏みとどまり、ピクリとも動きません。
「これは完全にプロの業者さんに頼むべき案件だったのでは……?」
何度も頭の中で自問自答が繰り返されます。空中に浮かぶ姿は、まるで『天空の城ラピュタ』の底に張り巡らされた巨大な根のようでした。
しかし、ついにその時が訪れます。地面と繋がっていた最後の太い主根を切り離した瞬間、それまで頑として動かなかった巨体が、グラリと傾いたのです。 「動いた……!」 視界が開け、業者に頼まなくても自分たちの手で成し遂げられるという、確かな希望の光が見えた瞬間でした。
掘り起こしたものの、あまりの重量にそのままでは穴から持ち上がりません。数日間天日に干して土を乾燥させ、使い古した歯ブラシやブロワ(送風機)を駆使して根の隙間の土を落とし、最後はチェーンソーで細かく裁断して、1か月がかりでようやく搬出に成功しました。

2番目に着手した木
3本が複雑に絡み合っている。
見るからに怪しげな雰囲気…。
嫌な予感しかしない。

あぁ改めて見ても本当に凄い…。
この根、掘れば掘るほどにあちらこちらに太い根があって本当に大変。掘って、虫にビビり、土をはらって、のこぎりで切って、人力が無理なら夫にチェーンソーで切ってもらって…。もう本当にこれの繰り返し。(これ、業者案件なんじゃない…。)

掘れば掘るほど複雑極まりなく…。
しかも配管が出てきた為丁寧に掘ることに。

周りを掘り進め足場を作り、土を払い、横に広がっていた太い根を切り取り少しコンパクトになった。
まるでラピュタね。
この時点ではまったくびくともしない。
(やっぱり業者案件では?)
と、何度も自問自答を繰り返した。

地面とつながっていた太い根の部分が切り離され、初めてぐらつき、そして少し傾いた写真。
まったく動かなかったこの根っこが動いた時、業者案件じゃなくてもいいんじゃないかと希望が見えた。


初めて見た裏。

地面から完全に切り離された側面。本当にラピュタみたい。

かなりの重量があったが、二人でなんとか移動させ、絡まっている根に付着している土をきれいに取り除き、不要な根をのこぎりやチェーンソーで切り落としていった。
とにかく軽くしないとこの穴から持ち上がらない。

脱出後。
とても重いので、軽くするために塊を小さくする作業に入った。
まず、根の隙間に詰まって固まっている土をきれいに取り除く為に数日間乾燥させ、目打ち、使い古した歯ブラシ、ブロワで土を取り除いた後のこぎりやチェーンソーで可能な限り細かく切っていった。水分を含んでいるのかチェーンソーでは切れない個所もあり、乾燥させながら時間をかけて可能な限り細分化した。それでも非常に重たかった。

伐根後の地面

本当に綺麗になった…。
写真だとあっという間だけど、ここまでするのに1か月ほどかかった。
本当に頑張った。

ラピュタと同時進行で作業に入った3番目の木。おとなしそうな顔をしている。ラピュタが一人作業の時にもう一人はこちらに着手。

やはり一筋縄ではいかず、掘っても掘っても長いごぼうのような根っこ。手前に見える配管まで伸びていた。

4番目の木。
この木はとにかく細かな根っこがあちらこちらにはびこっていて、剪定ばさみとのこぎりが大活躍した。

5番目の凛と立っている木。
良い木でしたが誰も名前わからずで…。
ここまで来たら残さず取り除くことに。


意外とあっけなく伐根成功。あっさりと傾倒した。

それでも重いので持てるサイズに裁断。
1本ずつ、実直に。地道な作業の先に見えた新しい庭
ラスボスである「ラピュタの根」と同時進行で、他の木々も実直に攻め落としていきました。
一見おとなしそうに見えても、地中深くにごぼうのような長い根を伸ばして配管を脅かしていた3番目の木。あちこちに縦横無尽に細かな根を張り巡らせ、剪定ばさみが大活躍した4番目の木。そして、凛と立っていた名前の分からない5番目の木は、ここまでの経験値を活かして驚くほどあっさりと伐根に成功しました。
11月から始めたこのお庭の開墾プロジェクト。最終的には、目立たない小さなものも含めて、トータルで10本ほどの切り株をすべて抜き去ることに成功したのです。
時間は確かにかかりました。泥まみれになり、筋肉痛に悩まされる日々でした。けれど、家にある道具だけで作業を完結させ、かかった費用はゴミの処分代だけ。これ以上ないほど濃密で、価値のある経験ができたと思っています。
これまでは、うっそうと茂る木々のわずかな隙間にプランターを置き、シソやバジルを細々と育てることしかできなかった我が家の小さな庭。しかし今、目の前には、自分たちの手で耕し、遮るもののなくなった、広々とした真っ白な大地のキャンバスが広がっています。
「為せば成る。自分の手で人生を育てる」
この手で開拓したこの大切な場所で、これから先、どんな家庭菜園を楽しんでいこうか。耕されたばかりのふかふかの土を眺めながら、私の新しい夢が、瑞々しく芽吹き始めています。



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