この記事では、退職を決意しながらも誰にも言えず追い詰められていた私を夫の優しさが救ってくれた日のことを振り返ります。
記録的な寒波が日本列島を覆った冬の朝、私は人生で経験したことのないほどの強烈な頭痛に襲われました。 コロナ禍で人手不足が加速し、介護職としての責任を抱えながら働き続けていた頃のことです。 心の中ではすでに「退職」を決めていたのに、まだ誰にも言えず、最後まで完璧に働かなければと自分を追い込んでいた時期でした。
そんな極限状態の中で、私を救ってくれたのは、夫の少し不器用で、でも確かに温かい優しさでした。
朝の静けさの中で感じた「秘密の重さ」
寒波は峠を越えたようで、窓の外には雪がありませんでした。 それでも体は重く、仕事に行きたくない気持ちが胸の奥に沈んでいました。
それでも私は、いつも通り仕事着に袖を通し、淡々と準備を進めます。 心の中では「退職する」と決めているのに、まだ職場には伝えていない。 その秘密が、私の肩に重くのしかかっていました。
「辞めるからこそ、最後まで完璧にやらなければ」
そんな生真面目さが、私自身を追い詰めていたのです。
夫の何気ない一言がほどいた心の緊張
朝食は昨夜の残りのチキンカレー。 夫は早朝にもかかわらず、嬉しそうにスプーンを動かしていました。
「CoCo壱に行くと、ほうれん草とチーズをトッピングするんだよ」
19年一緒にいて初めて聞く話でした。 そんな小さな“初耳”が、張り詰めていた心をふっと緩めてくれました。
その温かさを胸に、私は慌ただしく家を出て職場へ向かいました。
コロナ禍の介護現場で訪れた限界
当時のデイサービスは、コロナによる人手不足で常に緊迫していました。 「誰が休んでもおかしくない」 そんな状況で、私は「退職を伝えていない後ろめたさ」から、いつも以上に自分を追い込んでいました。
午前の入浴介助を終えた頃、異変は突然訪れました。
両目の奥からズキズキと脈打つ痛みが広がり、こめかみに触れるだけで血管の拍動が指先に伝わるほど。 痛み止めもなく、私はついに限界を迎え、同僚に頼んでソファーで横になりました。
「これは、ただの頭痛じゃない」
そう直感した瞬間でした。
帰宅後、夫が差し出したホットタオル
早退して帰宅すると、夫はワクチン接種直後にもかかわらず、すぐに私の異変に気づきました。
「ホットタオルと洗面器を持ってきて」
そう頼むと、夫は慌てながらも電子レンジで温めたタオルを運んできてくれました。 湯気が立ちのぼる熱々のタオルをパタパタと冷まし、そっと目の上に乗せると、張り詰めていた痛みが少しだけ和らぎました。
その後、夫は自分も腕が痛いはずなのに、そっと隣で横になり、私の体温に寄り添ってくれました。 その温もりに導かれるように、私は深い眠りへ落ちていきました。
目覚めの「家政婦は見た」事件
2時間半後、目を覚ますと体は痺れ、頭にはまだ重さが残っていました。 ふらつきながらトイレに向かうと、突然電気がバチッと消えました。
扉の隙間から、夫が片目だけを覗かせています。 まるで『家政婦は見た!』のワンシーンのようでした。
タイミングの悪すぎるいたずらに、思わず吹き出してしまいました。 その瞬間、頭の重さがスッと軽くなったのです。
引き算の優しさが、心を救ってくれる
私は退職を決めた後ろめたさから、「完璧に働かなければ」 「迷惑をかけてはいけない」 「弱音を吐いてはいけない」 と、足し算ばかりの責任感で自分を縛っていました。
でも、本当に私を救ってくれたのは、夫の不器用で、くだらなくて、温かい“引き算の優しさ”でした。
心が張り詰めているときほど、 「誰かと笑える時間」や「肩の力が抜ける瞬間」そんなたわいもない小さな日常が、心と体を守ってくれるのだと気づきました。
「頑張りすぎている自分」に気づいたら、 どうか一度立ち止まり、鎧を脱いでみてください。 大切な人と笑う時間が、きっとあなたを救ってくれます。



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